いま、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が、世界的な課題になっています。
この問題を解決するヒントが、実は戦国時代の携帯食にあるのではないか——。
そんな発想から生まれた企画を、今回は”企画書”としてご紹介します。テーマは、兵糧食(兵糧丸)の現代版・再開発です。

兵糧食(兵糧丸)とは?
兵糧食とは、かなり小さめの粒状の食べ物です。わずか5粒ほどで、しっかりと栄養がとれるようにつくられた、いわば完全食に近い携帯食。戦国時代、十分な食事を確保できなかった兵士たちのために生まれました。忍者が携帯していたことから「忍者飯」とも呼ばれ、現代では兵糧丸(ひょうろうがん)の名で知られています。人気漫画『NARUTO』にも登場するので、聞いたことがある人も多いかもしれません。
そもそも「食品ロス」とは?
食品ロスとは、本来まだ食べられるのに、捨てられてしまう食品のことです。日本では今、この食品ロスが大きな社会問題になっています。
数字で見る、日本の食品ロス
- 日本の食品ロスは、年間約464万トン(令和5年度推計)
- これは日本人1人あたり、1年で約37kgもの食べ物を捨てている計算
- そのうち、外食産業から出る食品ロスだけでも約66万トン
この中には、調理の過程で当たり前のように捨てられている、野菜や果物の「皮」も含まれています。でも、その皮は本当に「食べられないゴミ」なのでしょうか。栄養がぎゅっと詰まっていたり、工夫次第でおいしく食べられたりする部分も、決して少なくありません。
食品ロスの削減は、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)のターゲットにも掲げられており、2030年までに世界全体で食料の廃棄を半減させることが目標とされています。私たちにできることは何か——。その問いから、この兵糧食(兵糧丸)の企画は生まれました。
(出典:農林水産省「食品ロスとは」/消費者庁「2023年度食品ロス量推計値」)
▶ 食品ロスについてさらに詳しく知りたい方は、環境省の食品ロスポータルサイトもあわせてご覧ください。
では、どうすれば解決できる?
食品ロスを減らす方法は、いくつもあります。国や自治体、企業も、さまざまな取り組みを進めています。代表的なものを見てみましょう。
- 買いすぎ・作りすぎを防ぐ:必要な分だけ買う、食べきれる量を作る
- 「手前取り」をする:スーパーで棚の手前にある、賞味期限が近い商品から買う
- 食べ残しを持ち帰る:外食で残したものを持ち帰る取り組み
- 捨てていた部分を「食べる」:野菜や果物の皮など、これまで廃棄されていた部分を活用する
私たちが注目したのは、最後の「捨てていた部分を食べる」という方法です。「我慢して減らす」のではなく、「おいしく食べて、結果的に食品ロスが減る」——。そんな前向きな解決策はつくれないか。そう考えたときに出会ったのが、戦国時代の携帯食「兵糧食(兵糧丸)」でした。

栄養価が高く、さまざまな素材を混ぜ込める兵糧食は、廃棄されがちな皮や規格外野菜を活用するのに、うってつけの器だったのです。
なぜ今、戦国時代の携帯食なのか?
この企画には、2つの目的があります。
① 自国の歴史を、食から知るきっかけに
戦国時代の兵士が実際に食べていた兵糧食を通して、日本の歴史や文化への理解を深めるきっかけをつくる。
② 食品ロスと、未来の食を考えるきっかけに
栄養価が高く、エコな食品を口にすることで、環境問題を自分ごととして考える。そして、自分たちの未来の食のあり方を見つめ直す。
戦国時代の兵糧食
まずは、当時つくられていた兵糧食を見てみましょう。主な材料は、薬用人参、そば粉、小麦粉、山芋、甘草、ハト麦、もち米、酒など。生薬を含む、非常に手の込んだ携帯食でした。
メリット
- 栄養価が高い
- 一粒一粒が小さく、携帯しやすい
デメリット
- 賞味期限が短い(15日ほど)
- 見た目が美味しくなさそう
なお、兵糧食のレシピは家系ごとの秘伝とされ、材料も配合も家によって異なっていたため、詳細は今も不明な部分が多く残されています。当時使われていたとされる材料の一覧は、以下にまとめました。

戦国時代の兵糧食に使われたとされる材料一覧
炭水化物
- 晒米(水で晒した白米)/蕎麦粉/はったい粉/キビなど雑穀粉
- きな粉/葛粉あるいはわらび粉/山芋粉もしくは里芋粉(干して挽いたもの)
タンパク質・海洋性ミネラル・動物性ビタミン類・油脂成分
- 脂質・タンパク質が豊富な穀物および豆類
- 鰹節・にぼし粉などの魚粉
植物由来ミネラル・ビタミン類・食物繊維・油脂成分
- 梅干(クエン酸)/松の実/ゴマ、エゴマ、ナタネ
- 地域で採れる薬草・野草・山菜・野菜を乾燥または煮て干したもの
- クチナシ粉末/はじかみ粉末などの栄養価の高い食品
添加物
- 蜂蜜または水飴/甘草(糖類・矯味剤)
- 焼酎・日本酒・濁酒(溶出材・栄養抽出材)
- ゴマ油や菜種油等の植物油(脂質と脂溶性ビタミンの摂取)
※材料によっては魚粉などの臭みがあるため、松の甘皮粉末・肉桂・薄荷・生姜・山椒・擂りゴマ・ゴマ油などが「矯味剤(食べやすくするための材料)」として使われていました。
私たちが考える「理想の兵糧食」
オリジナルの兵糧食には、いくつかの課題がありました。そこで私たちは、その課題を解決した「理想の兵糧食」を構想しました。目指したのは、次の条件をすべて満たす携帯食です。
- 栄養価が高い
- 携帯できる小ささ
- 保存期間が長い
- 美味しそうな見た目・美味しい味
そして最大のポイントが、本来なら廃棄されてしまう野菜や果物の皮、規格外野菜を活用すること。たとえば果物の皮を使えば、野菜ジュースのような風味を出せるのではないかと考えています。
企画のこだわりポイント
- 食べる部分:果物の皮は苦いものが多いため、その苦味とも相性が良い甘さに調整。ドライフルーツを加えて味のバリエーションも増やします。
- 包装:摂取目安の2〜3粒を一包みにし、それを複数まとめて1パックに。食べられるオブラートなど、包装の工夫も検討中です。
- ターゲット:小・中・高校生から社会人まで、どの年齢層でも扱いやすい食品を目指します。
こんな使い方をイメージしています
- 部活や仕事終わりに1〜2粒。栄養価が高いので、体に良いおやつ代わりに。
- 水分量が少なく冷凍もできるため、消費期限を延ばせば備蓄食材としても活用可能。
イメージとしては、「カロリーメイト」や「10秒チャージ」のように、小腹が空いたときにさっと栄養補給できる——そんな存在を目指しています。
現代版・兵糧食の作り方【試作中】
現在、私たちは実際に試作を重ねています。分量は調整中のため今回は公開できませんが、基本的な材料と手順をご紹介します。
主な材料(検討中)
この兵糧食の最大の特徴は、本来なら廃棄される「果物の皮」や「規格外野菜」を活用すること。ベースとなる粉類に、これらを組み合わせていきます。
★ 廃棄食材を活用する部分
- 果物の皮(りんご・みかんなど):本来は捨てられてしまう部分。乾燥させて粉末にすることで、風味づけに活用します。皮には栄養も多く含まれています。
- 規格外野菜:形が悪い、傷があるなどの理由で出荷できない野菜。味や栄養は通常のものと変わりません。乾燥させて混ぜ込みます。
そして、これらを支えるベースの材料がこちらです。
- はったい粉・米粉:ベースとなる炭水化物。(※黒くなりにくく、クセの少ない材料を選定)
- 蕎麦粉:タンパク質が非常に豊富。ただし比較的高価なため、使用量は控えめに。
- 豆類:味の主張が少なく使いやすい。どの豆を使うかは検討中。
- 蜂蜜:砂糖を使わず、素材本来の甘さを引き立てる優しい甘みに。(現代版として、ココアパウダーを加えたチョコ味も検討中です)
なお、お菓子感覚で食べられる味を目指しているため、魚粉は使用せず、臭み消しの矯味剤も加えない方針です。

作り方
材料をすべてすり潰し、よく混ぜ合わせます。
生地をこねて丸め、クッキングシートを敷いた蒸し器の上に並べます。(小籠包を蒸すときのような配置をイメージ)
30分ほど蒸します。
蒸し上がったら完成です。
カロリーメイトや「忍者めし」との違い
「それって既存の栄養補助食品と何が違うの?」と思われるかもしれません。私たちが考える違いは、次の2点です。
- 大きさ:ラムネほどの小さな粒状。1個あたりが小さいので、手軽に量を調整できます。
- 廃棄食材の活用:本来捨てられる野菜や果物の皮を使う点が、最大の特徴です。「食べること」がそのまま「食品ロスを減らすこと」につながります。
この企画に、興味を持ってくれた方へ
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。この兵糧食プロジェクトは、まだ始まったばかりの企画です。「面白そう」「一緒に考えてみたい」— そう感じてくださった高校生、そして企業・団体の皆様と、この企画を共に育てていけたら嬉しいです。私たちの活動について、ぜひ一度のぞいてみてください。
お問い合わせ
企画:秋田寧々
編集:長尾一成