2025年3月28日、関西生徒会未来団体は、学校や病院などに給食を提供している株式会社テスティパル様にインタビューを行いました。「なぜ余った給食は持ち帰れないの?」という素朴な疑問から始まり、食材選びの基準や調理で出るごみの行方まで、給食の裏側を詳しく教えていただきました。


株式会社テスティパル様とは
テスティパルグループは、大正14年に大阪で創業した給食N会社です。「食は一個人の事業ではなく、社会事業である」という創業者の信念のもと、学校・病院・福祉施設・企業の社員食堂など、さまざまな場所に食事を届けています。

インタビューのきっかけ
「日本の給食を世界へ」をテーマに企画を考えていました。その中で、給食の食べ残しや余った給食が捨てられてしまう問題を見つけました。「どうなっているのだろう」と考え、実際に給食を手がけるプロの方にお話を伺うことにしました。
インタビュー
Q. なぜ余った給食は持ち帰れないのですか?
給食には「作ってから2時間以内に食べなければならない」というルールがあり、これは保健所が定めているものだそうです。もし持ち帰った給食で体調を崩すなどの事故が起きた場合、作った側が責任を負うことになります。
また、給食はそもそも日持ちさせることを前提に作られていません。保存のための工夫がされている市販の食品とは、同じ扱いができないのです。ただし例外もあり、パンのように給食会社が別の会社から購入しているものは、販売元が定めた期限に従うとのことでした。
Q. 給食の質が落ちている、というニュースを見ました。どうお考えですか?
昭和・平成・令和の給食を比べると、大きく変わっていることは確かだそうです。背景にあるのは、お米の値上がりや気候変動。近海で魚が以前ほど獲れなくなり、遠くまで漁に出ることで燃料費や時間がかかること、さらに漁獲量の上限があることも、価格の上昇につながっています。
そこに人件費の負担も重なり、国からの補助だけでは足りず、年々金銭面は厳しくなっているとのこと。それでも、生徒にどんな栄養が必要かを考え、「健康と安全・安心」を最優先に献立を組んでいると話してくださいました。
Q. 虫食いの有機野菜と、農薬を使ったきれいな野菜。どちらを優先しますか?
テスティパル様が何より大切にしているのは、「いいもの」をつくること。野菜は見た目によって「秀・優・良」の3つに分けられており、給食には最も見た目の優れた「秀」が使われているそうです。
理由は、給食があくまでお客様のために作るものだから。もし見た目のよくない野菜を使っていることが保護者に伝わり、理由を聞かれたとき、「値段が高いから」とは説明しにくいのです。見た目以外、味も栄養も「秀」とそれ以外で変わらないそうですが、規格外野菜を使っていると明示しない限りは、最も優れた食材を使うべきだと考えているとのことでした。
農薬については、国内のルールに沿って使われているため健康への影響はないとされていることです。また給食の野菜は市の栄養教諭が選んでいることも教えていただきました。
Q. 余らないように、仕入れを工夫していますか?
基本的に、実際に使う量の食材しか発注できない仕組みになっているそうです。
Q. 調理の過程で出るごみは、どうしているのですか?
以前は、ごみを乾燥させて肥料にする取り組みも行っていたそうです。しかし加工食品には塩分が多く含まれており、塩分の多い肥料は土地を傷める「塩害」の原因になってしまうため、今は行っていないとのこと。環境のための取り組みが、逆に環境を悪くしてしまうこともあるという話は、私たちにとって大きな気づきでした。
一部では廃油として活用する取り組みもあり、今後の検討課題だそうです。なお、食材の端材を集めてスープにしていた時代もありましたが、現在は禁止されています。
Q. コロナ禍では、どんな課題がありましたか?
余った給食は他のクラスに分けるなどの工夫をしていたそうです。一方で、学級閉鎖の決定が遅いと、すでに調理した分はすべて廃棄せざるを得ません。早めに分かった場合は、食材を調理せずに別の日に回すなどして、ロスを減らしていたとのことでした。
Q. 食べ残しの多いメニューのデータはありますか?
食べ残しは学校側で管理しているため、テスティパル様では把握していないそうです。安全で健康的な食事を届けることを第一の目的としているため、食べ残し対策そのものは多くないものの、食事の時間を楽しんでもらえるよう、「ラッキーにんじん」のような工夫を取り入れているとのことでした。
Q. 少子化は、給食にどんな影響を与えていますか?
学校ごとに給食の仕組みはさまざまなので、少子化で学校が統合されると、給食のシステム自体が変わってしまうそうです。少子化は、給食にも大きな影響を与えています。
Q. 日本の給食の仕組みを、どう見ていますか?
生徒が自分たちで配膳する日本の仕組みは、とても良いものだと話してくださいました。リーダーを育てるという意味でも、優れた仕組みだと考えているそうです。
Q. 学校と直接関わる機会はありますか?
アンケートや出前授業など、食育を目的に学校の授業の時間をお借りして取り組みたいと考えているそうです。地域とのつながりを大切にされていることが伝わってきました。
テスティパル様からいただいたアドバイス
インタビューの最後には、私たちの企画に向けて、たくさんのアドバイスをいただきました。
- 何を世界に発信したいのかを、まず明確にすること
- 給食の食材が、農家からどんなルートで届いているのかを調べ、発信すること
- 生産者の顔写真だけでなく、その農家がどんな工夫をしているかを伝えること(QRコードで農家のホームページを見られるようにする、など)
- 調理後は2時間ルールがあるため外部販売は難しいが、調理前の食材ならカフェなどで調理して提供できる可能性がある
- 冷凍することで、長期保存ができるのではないか
- 未来の給食の仕組みを、改めて考えてみること
インタビューを終えて
私たちは当初、「余った給食の持ち帰りを禁止するのではなく、そもそも余らない工夫をするべきではないか」と考えていました。しかし実際にお話を伺うと、給食の現場ではすでに「使う分しか発注しない」「調理前に分かれば別の日に回す」といった工夫が重ねられていて、それでも安全を守るために捨てざるを得ない場面がある、という現実が見えてきました。
見た目以外は味も栄養も変わらない野菜が、給食では使われにくいこと。環境のための肥料づくりが、塩害という別の問題を生んでしまうこと。どちらも、現場の方に直接聞かなければ知ることのできなかった話です。
お忙しい中、質問ひとつひとつに丁寧に答えてくださった株式会社テスティパル様に、心より御礼申し上げます。
編集:長尾一成
