レストランで、自由にメニューを選べない。食べたいものがあっても我慢する。料理が運ばれてくるたびに、アレルギーの食材が入っていないかハラハラする
食物アレルギーがある人にとって、これは特別なことではなく「日常」です。今回ご紹介するのは、そんな「日常のちょっと悲しい」をなくしたいという想いから生まれた、ノンアレルギーベーグルの企画書です。
この企画が生まれるまで
この企画の出発点は、「全ての子ども達が笑顔でいられる食のあり方」という大きなテーマでした。「ノンアレルギー×子ども」という視点から、ノンアレルギーレストランをつくる構想を立て、さらにそれを「未来の子ども食堂」として、お弁当やレストランの形で具体化していきました。
その大きな構想を、まずは一つの商品として形にしよう。そうして生まれたのが、このノンアレルギーベーグルです。

企画の目的
すべての子どもたちが笑顔でいられる食のあり方を提案すること。
そのために、まずは「おいしそう、食べたい」と思ってもらえるノンアレルギー食品を創る。そして、これまでノンアレルギー食品につきまとっていた「あまりおいしくない」という固定観念を覆すことを目標にしました。
なぜ、この企画なのか
人が一番幸せを感じるのは、おいしいものを食べている時間ではないか。でも、アレルギーがあるとその幸せな時間が我慢や不安と隣り合わせになってしまいます。
そこで、新しい食のあり方として「気軽にノンアレルギーフードが食べられる環境」を提案します。最終的な目標は、ファミリーレストランのように身近な感覚で利用できる、ノンアレルギーレストランをつくることです。
企画の内容
関西生徒会未来団体との共同開発という形で、企業にノンアレルギーメニューを商品化してもらう企画です。
ベーグルに使う材料をノンアレルギーのものに置き換え、元の商品と比べて味・見た目・値段に差が出ないことを大切にしました。
この企画での「ノンアレルギー」とは
この企画書では、食品表示のルールで定められている「特定原材料等」を一切使わないことを、ノンアレルギーと定義しました。それが難しい商品の場合は、表示が義務づけられている「特定原材料」だけを使わない、低アレルギーメニューとして提供することも視野に入れています。
食物アレルギー表示の対象品目(2025年10月時点)
特定原材料(表示義務・8品目)
えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
特定原材料に準ずるもの(表示推奨・20品目)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
※その後、2026年4月1日の食品表示基準の改正で、カシューナッツが表示義務の対象に移り、ピスタチオが表示推奨の対象に加わっています(合計29品目)。
ベーグルのレシピ案
生地は、小麦を使わない米粉パンの生地がベース。よりおいしく仕上げるために、水飴ときび糖を加えることを提案しています。
コンセプトは「誰もが楽しめるスイーツベーグル」。「ベーグルは硬い」「ご飯系の食べ物」というイメージを吹き飛ばしたい。そして、スイーツ店で食べたいものを自由に選べない、という「ちょっと悲しい」もなくしたい。そんな思いから「見た目で楽しい」「自分で参加できる」「誰かに見せたくなる」など食べる時間そのものを楽しくする工夫がたくさん生まれました。
ショートケーキベーグル
- ベーグルを半分に切り、クリームを塗る(クリームの代替素材は検討中)
- スライスしたいちごをのせ、ベーグルで挟む
- 上からドライいちごのフレークをふりかける(接着にはハニーグレーズを使用)

ショコラベーグル
- 生地にココアパウダーを練り込む
- アレルギーフリーのチョコレートを溶かし、ベーグルをディップする
- スライスしたアレルギーフリーチョコレートを上にふりかける

琥珀糖のキラキラベーグル
- 紫色の着色料(素材は検討中)を練り込み、マーブル模様の生地をつくる
- 薄くつくった琥珀糖を、ハニーグレーズでベーグルの上に貼りつける

アサイーベーグル
- アサイージュースを練り込んだ生地をつくる
- 半分に切り、バナナといちごを挟む
- 上にキウイといちごをのせ、最後にはちみつをかける
※バナナとキウイフルーツは表示推奨品目に含まれるため、アサイーベーグルは「特定原材料を使わない低アレルギーメニュー」としての位置づけになります。

他のベーグルのメニュー案
- めっちゃでかいベーグル:味はふつうのベーグルと同じで、サイズは顔より大きく。高校生がインスタに載せたくなる「映え」をねらい、自然と広報につながることを目指した案です。
- ダブルベーグルバーガー:レタス・バンズ・チーズ・トマトなどを挟んだ、二段重ねのベーグルバーガー。見たことのない形で、独創性をねらいました。(※チーズは乳を含むため、代替素材の検討が必要です)
- ベーグルを自分で作ってもらおう!:お客さん自身にベーグルを作ってもらう体験型の案。老若男女が参加できるので、楽しみながらノンアレルギーについて知ってもらえます。
- メッチャミニ!ベーグル:指にはめられるくらい小さなベーグル。遊び心のある形で、独創性をねらいました。
形で楽しむパンの案

- 杖のようなパン:輪がつながったようなパンができるなら、取っ手をつけて杖の形に。レインボーカラーにすれば、アメリカンな見た目にもできます。
- 海賊の剣パン:杖のパンと同じく食べやすく、何よりかっこいい。子どもも大人もワクワクできる形です。
- 電卓風パン:1〜9の数字が並んだ、ちぎりパンのようなパン。
ポンデリングティラミス風ベーグル
カカオ100%のカカオニブと、カフェインを取り除いたデカフェコーヒーを組み合わせ、ノンアレルゲンでカフェインも少なめのティラミスを再現する案です。カカオニブはカカオ100%で苦みが強いため、砂糖を加えて食べやすくします。
本当はミャクミャクの形にしたかったものの、実現できるかわからないため、丸い玉がつながった輪の形を採用しました。この「輪」には、万博で掲げられた人と人、国と国の「つながり」を表現しています。ノンアレルギーで低カフェインでありながら、見た目も味も楽しめる一品を目指しました。
※「ポン・デ・リング」はミスタードーナツの商品名です。ここでは形のイメージとして用いています。
発案:岩井駿人




期待される効果
アレルギーをもつ子どもたちはもちろん、その家族や友だちも一緒に、安心して楽しく食事ができるようになること。さらに、グルテンフリーを気にしている方や、ヴィーガンの方に向けた商品にも広げていける可能性があります。
想定されるリスクと、向き合い方
「ノンアレルギー食品はおいしくない」という偏見から、販売数が伸び悩むかもしれません。また、ノンアレルギーを追求しすぎるあまり、元の商品と味が変わってしまう可能性もあります。
だからこそ、ノンアレルギーを目指しながらも、一番大切なのは「おいしい」ことだと考えます。ノンアレルギー食品は「アレルギーのある人だけが食べるもの」という偏見を取り払うため、誰もが食べたくなる見た目と味にこだわります。
※本記事は企画段階の構想を紹介するもので、実際に販売された商品ではありません。食物アレルギーをお持ちの方は、実際の食品を選ぶ際、必ず原材料表示を確認し、医師の指示に従ってください。
その後:企画は「パーグル」に
この企画書をもとに、私たちは兵庫県丹波篠山市のパン工場を見学し、実際につくられているノンアレルギーのパンを見せていただきました。そしてその後、ゼック・グループ様とそのパン工場がタッグを組み、米粉100%のアレルギーフレンドリーパン「パーグル」の事業が始まりました。
文責:佐孝祐佳
編集:長尾一成




